この記事について

新しく購入した NVIDIA GeForce RTX 5060 Ti で、ローカルでアニメ系イラストを生成できる ComfyUI + Illustrious(SDXL系) の環境を構築したときの手順メモです。

書きたいポイントは2つあります。

  1. ダウンロードして起動するまでの、手順そのものの流れ
  2. RTX 50シリーズ(Blackwell世代)という新しいGPU特有の「落とし穴」

特に2つ目が重要です。ここを知らないと、「起動はするのに、いざ生成しようとした瞬間にエラーで止まる」という現象にかなりの確率でハマります。この記事は、そこを回避することを一番の目的にしています。

対象読者:Windows PC に新しめの RTX 50シリーズGPUを積んでいて、これからComfyUIでローカル画像生成を始めたい方。


結論から:Blackwell世代GPUで最初に押さえる点

RTX 50シリーズ(RTX 5060 Ti / 5070 / 5080 / 5090 など、Blackwell世代)は、PyTorch が新しいビルドでないと画像生成ができません。

  • 必要条件の目安:PyTorch 2.7 以降、かつ CUDA 12.8(cu128)以降
  • 古い cu124 などのままだと、起動そのものは成功するのに、生成の瞬間に次のエラーで落ちます。
CUDA error: no kernel image is available for execution on the device

これは「GPUが新しすぎて、古いPyTorchに“このGPU用の計算カーネル”が入っていない」ために起きます。Blackwell世代は内部的に sm_120 という新しい世代区分になっていて、そこに対応したビルドでないと計算を実行できない、という仕組みです。モデルの種類とは無関係で、あくまでGPU側の要件になります。

配布パッケージによっては古いPyTorchを同梱している場合があります。ですので、「ダウンロードして起動できた」だけで安心せず、必ずPyTorchのバージョンとGPUの動作を検証する。これがこの記事の肝です。

補足:筆者が試した時点の最新版パッケージは、最初から新しいPyTorch(2.13系 / CUDA 13.x)を同梱していて、アップグレード不要でそのまま動きました。ただしこれは時期やパッケージによって変わります。運が良かっただけかもしれませんので、「検証するという手順自体は必ず踏む」ほうが安全です。


用意するもの(前提環境)

  • OS:Windows(本記事は Windows 11 で実施)
  • GPU:RTX 5060 Ti(VRAM 16GB)。RTX 50シリーズ全般で考え方は同じです
  • ストレージ:空きに余裕のあるドライブ。SDXLモデルは1本6〜7GBあるので、数十GBは見ておくと安心です
  • インストール先:任意のフォルダ(本記事では例として <ComfyUIルート> と表記します)

必要になるツールは次のとおりです。

  • 最新のNVIDIAドライバ
  • 7-Zip(配布ファイルが .7z 形式のため)
  • curl(Windows標準搭載のもので構いません。大容量ダウンロードのレジューム対応が便利です)
  • (任意)Git(拡張機能の導入で使います)

手順

Step 0. 既存の残骸を片付けて、きれいな土台にする

過去にComfyUIを入れて失敗した経験がある場合、壊れた環境の上に重ねると再び詰まりやすくなります。まず以下を確認して、あれば退避・隔離してからやり直します。

  • インストール候補フォルダ(<ComfyUIルート> に相当するもの)や、デスクトップ版アプリの残骸
  • 退避すべき貴重なデータ:ダウンロード済みモデル、生成画像(output)、保存済みのワークフローや設定(user)

いきなり削除するのではなく、旧フォルダはリネームして隔離し、新規用に空のフォルダを用意するのが安全です。

今回はまっさらな環境だったため、この工程はスキップできました。既存環境がある方ほど、丁寧に進めてください。


Step 1. NVIDIAドライバを確認する

コマンドで nvidia-smi を実行し、次の2点を確認します。

  • 自分のGPU(例:RTX 5060 Ti)が正しく表示されている
  • 右上の CUDA Version が 12.8 以上(=十分に新しいドライバが入っている)

古い場合や認識されない場合は、NVIDIA公式サイトから最新の Studio または Game Ready ドライバを入れてから先へ進みます。Blackwell世代は、特にドライバが新しいことが前提になります。


Step 2. 7-Zipを用意する

配布ファイルが .7z なので、展開用に7-Zipを入れておきます。winget などのパッケージマネージャを使うと一発で入ります。


Step 3. ComfyUIポータブル版(NVIDIA用)を入手して展開する

  • ComfyUIのポータブル版(NVIDIA/Windows向け、.7z)を公式リリースから取得します(約2GB)。
  • 回線が不安定でも途中から再開できるよう、レジューム対応のダウンロードを使うと安心です。
  • ダウンロードした .7z を展開すると、<ComfyUIルート> の下に次のものが並びます。
    • run_nvidia_gpu.bat(起動用)
    • ComfyUI(本体)
    • python_embeded(同梱Python)
    • update(更新スクリプト)

この run_nvidia_gpu.bat がある階層を、以降「ComfyUIルート」と呼びます。


Step 4.【最重要】Blackwell対応PyTorchを「検証」して、ダメなら是正する

このStepを飛ばすと、RTX 50シリーズではかなりの確率で生成時にエラーになります。面倒でも必ず実施してください。

(1) 現状のPyTorchを確認する

同梱Pythonで、PyTorchのバージョン・CUDA・GPU認識状況を表示します。確認したいのは次の4つです。

  • torch のバージョン(2.7.0 以上か)
  • cuda のバージョン(12.8 以上か)
  • GPUが利用可能(available = True)か
  • GPU名(自分のGPUがエラーなく表示されるか)

(2) GPUで実際に計算させてみる(ここが決定的)

小さな行列計算をGPU上で1回走らせて、数値が返ってくればOKです。ここで先ほどの no kernel image is available などが出たら不合格です。

バージョン表記だけが合っていても、実際に計算させて初めて分かることがあります。available = True は「ドライバがGPUを認識した」ことしか示さず、「そのGPU用のカーネルが実際に動くか」までは保証しません。ですので、この実計算テストは省略しないことをおすすめします。

(3) 不合格だった場合の是正

新しいPyTorch(cu128以降のビルド)に入れ直します。イメージとしては、同梱Pythonに対して torch / torchvision / torchaudio を cu128系のインデックスから入れ直す操作です。完了後、もう一度 (1)(2) を実行して合格を確認します。

厳密なコマンドは環境で変わるため、詳細はPyTorch公式の入手ページを参照するのが確実です。

✅ 合格の目安:torch ≥ 2.7.0 / cuda ≥ 12.8 / GPU利用可能 / 実計算テストが数値を返す。


Step 5. ComfyUI本体を最新に更新する(更新後に再検証)

update フォルダ内の更新スクリプトで本体を最新化します。

注意点があります。依存関係の更新の副作用で、まれにPyTorchが古い版へ巻き戻ることがあります。更新したら、Step 4の検証をもう一度実行して、合格状態が維持されているかを必ず確認してください。


Step 6. モデル管理を楽にする拡張(ComfyUI-Manager)を入れる

モデルやLoRA、追加ノードの管理・導入が一気に楽になる定番拡張が ComfyUI-Manager です。custom_nodes フォルダへ導入します(Gitでの取得が簡単です)。近年のパッケージには同梱されていることもあるので、無ければ入れる、という判断で問題ありません。


Step 7. 土台となるモデル(Illustrious系checkpoint)をダウンロードする

  • 置き場所:<ComfyUIルート>/ComfyUI/models/checkpoints/
  • 今回は Illustrious XL v1.1(SDXL系、約6.5GB)を採用しました。配布元(Hugging Face の OnomaAI 公式リポジトリなど)から、ログイン不要で直接ダウンロードできます。
  • あわせてLoRA置き場 .../models/loras/ も用意しておきます(後でスタイルLoRAを足すときに使います)。

破損チェックの目安:ダウンロード後のファイルサイズが極端に小さい(例:1GB未満)場合は、中身がエラーページ(HTML)になっている失敗ダウンロードの可能性が高いです。レジューム対応のダウンロードで取り直します。

なぜ v1.1 か:既存のIllustrious/SDXL用LoRA資産との互換性が広く、そのまま使い回しやすいためです。見栄えを重視するなら、人気のファインチューン版(Illustrious系)に後から差し替えることもできます。


Step 8. ワークフローはデフォルトでOK

Illustriousは標準的なSDXLパイプラインで動くため、ComfyUI起動時のデフォルトワークフローがそのまま使えます。特別なテンプレートは不要です。

  • 基本構成:Load Checkpoint → CLIP Text Encode(正/負)→ KSampler → VAE Decode → Save Image
  • LoRAを使うなら、Load LoRA ノードを1つ挟んだ構成を作って保存しておくと、以後が楽になります。
  • アニメ系の慣例で clip skip 2 を使いたい場合は、CLIP Set Last Layer-2 で追加します。

Step 9. 起動してテスト生成する

  1. ComfyUIルートの run_nvidia_gpu.bat を実行します。
  2. コンソールに次の行が出れば起動成功です。
To see the GUI go to: http://127.0.0.1:8188
  1. ブラウザで http://127.0.0.1:8188 を開き、Load Checkpoint で先ほどのモデル(Illustrious XL v1.1)を選択します。
  2. プロンプトを入れて Queue(生成)を押します。

テストに使ったプロンプト例です。

  • 正のプロンプト:
    masterpiece, best quality, amazing quality, very aesthetic, 1girl, long black hair, school uniform, cherry blossoms, soft lighting

  • 負のプロンプト:
    worst quality, low quality, lowres, bad anatomy, bad hands, jpeg artifacts, watermark, signature

  • 推奨設定:サンプラー euler_a / CFG 5〜6 / ステップ 28前後 / 解像度 1024x1024

初回はモデルの読み込みで少し待ちます。エラーなく output フォルダに .png が出力されれば構築成功です。

RTX 5060 Ti / VRAM 16GB の環境では、SDXLの1024×1024は余裕を持って生成できました。


つまずきポイントとトラブルシューティング(Blackwell特化)

  • 生成した瞬間に CUDA error: no kernel image is available for execution on the device
    → PyTorchがBlackwellに対応していません。Step 4のcu128アップグレードで解決します。これが最も多い罠です。
  • Torch not compiled with CUDA enabled / GPUが使えない(available = False)
    → CPU版のPyTorchが入っている状態です。Step 4で入れ直します。
  • 更新したら急に動かなくなった
    → 更新でPyTorchが巻き戻った可能性があります。Step 4を再検証し、必要ならcu128を再適用します。
  • checkpoint一覧に目的のモデルが出てこない
    → 置き場所(models/checkpoints/)を再確認します。画面のリフレッシュ、または再起動で反映されます。
  • ダウンロードが途中で切れる/やたら小さいファイルになる
    → 中身がエラーページを掴んでいる状態です。レジューム対応のダウンロードで取り直します。
  • VRAM不足(CUDA out of memory)
    → 16GBならSDXLは通常余裕があります。出た場合は、生成サイズやバッチ数を下げるか、省VRAMモードで起動します。
  • 「◯◯.safetensors が不足しています」と出る
    → これはモデル本体の不具合ではなく、読み込んだワークフローが「手元に無いモデル/LoRA名」を指しているだけです。該当ノードで実在するモデルを選び直すか、不要なLoRAノードを外せば消えます。

まとめ

  • ComfyUIポータブル版は、「落として展開して起動」までは驚くほど簡単です。
  • ただし RTX 50シリーズ(Blackwell)では、PyTorchの要件(2.7以降 / cu128以降)が必須の前提になります。ここだけは必ず自分の目で検証してください。
  • 土台に Illustrious XL v1.1 を置き、そこにLoRAを足していけば、ブラウザでプロンプトを変えるだけで即生成できる環境が完成します。

新しいGPUほど、「ソフト側が追いついているか」を確認する一手間が効きます。同じRTX 50シリーズで詰まっている方の助けになれば幸いです。

ライセンスについて一言:Illustrious系モデルやLoRAには、それぞれ個別のライセンスがあります。商用利用や再配布の可否は、各配布ページの記載に従ってください。